第9回 地域に貢献、還元しながら、新たなチャレンジを従業員と共に楽しむ – ホテルパームロイヤル NAHA 国際通り 代表取締役総支配人 高倉 直久 氏
更新日:2023年5月19日
2005年にオープンし、2018年は新館RAMタワーを開業、那覇国際通りのホテルでは唯一地上階でプールとプールサイドバーを設けている「ホテルパームロイヤル NAHA 国際通り」。地元との関わりを大切にしながら、CO2削減の取り組みとして全館の電力をバイオマス電力に切り替えるなど、サステイナブル経営に取り組んでいる同ホテルの代表取締役総支配人、高倉 直久 氏にお話をうかがいました。(聞き手:TrustYou株式会社 前代表取締役 設楽 奈央)
設楽:まず御社のご紹介をお願いできますでしょうか。
高倉氏(以下敬称略):弊ホテルは100%地元資本で、オーナー企業です。県外や外資を資本とするホテルが多い沖縄では珍しいかもしれません。2005年にオープンし、今年で17年目を迎えますが、開業当時は、那覇市内でもビジネスホテルの建設ラッシュとなっていましたので、ワンランク上のビジネスホテルを目指して運営を始めました。
ただし、その後運営をしていく中で、シングルルームが8割を占めていたこにより、夏場のシーズンの収益が少なくなっていることに気づきました。そこで、シングルルーム2部屋を1つにつなげて家族向けの大部屋に改修し、「パームロイヤルツイン」というカテゴリを新たに作りました。その後、ツインルームを40部屋まで増やし運営を続けたところ、夏場の需要の取りこぼしがなくなり、順調に売上も伸びていきました。
その後、ビジネスとファミリーのお客様の両方が増えていく中で、さらにワンランク上のホテルを目指すべく2018年に開業したのが新館のRAMタワーです。RAM(ラム)はRoyal Art Museum (ロイヤル・アート・ミュージアム)の略で、館内では200点近い絵画や調度品を展示しており、お客様も無料で絵画鑑賞が楽しめます。
その1年後に、元々駐車場であった場所に、プールとプールサイドバーを設けました。「プールを造ればホテルの価値がより上がるのではないか」という、知り合いの不動産開発会社の方からのアドバイスをきっかけに、RAMタワーを建てたすぐ後ではあったのですが、実行に移しました。現在は、ビジネスホテルとは謳(うた)わずに、宿泊特化型ではあるのですが、「都市型リゾートホテル」としてさらに収益を上げていくための取り組みをしています。
設楽:那覇のホテルにプールがあるかないかでは大きく客単価と客層が変わるというお話は、たしかに以前に他の那覇のホテル様からうかがったことがありますが、プールを造るということは容易な決断ではなかったと思います。何か良い案を思いついたら、借り入れを含めすぐに実行に移すという、御社が経営判断を速く動かせるのはなぜなのでしょうか。
高倉:弊ホテルの共同代表である私の父(代表取締役社長 高倉 幸一 氏)は、元々不動産開発のディベロッパーであり、新規事業を考え、事業の収益を上げるための方法を考えるのが非常に得意です。そして、ホテル運営は私の得意分野ですので、父が開発担当、そして私をサポートしてくれる姉(マーケティングディレクター 高倉 ウィラー 智子 氏)もおりますので、家族で会社の切り盛りをしならがら、新規事業の収支が合うようであれば、借り入れに向けて銀行に企画書を持参しています。
国際通りには、プールが地上階にあるホテルは弊ホテル以外にはなく、プールが地上階にあることで外来のお客様が利用しやすくなるという利点があります。プールサイドでバーベキューを楽しむお客様のほとんどは外来のお客様ですし、地元の方々にも認知をしていただきながら、地元と一緒にこのホテルを育てていきたいという思いで日々運営させていただいています。
設楽:県外資本や海外資本のホテルですと、ブランドの維持・強化を意識するため、お客様を東京から呼ぶことが主な目的になったりしますよね。「地域の皆でホテルを盛り上げる」というコンセプトがあるからこそ時代に合わせて変化できるのですね。
高倉:宿泊に関しては元々、県外や海外のお客様が多かったのですが、プールとプールサイドバーをオープンすることにより、地元のお客様との接点が多くなりました。弊ホテルをより身近に感じていただいて、近年では県内のお客様にもご宿泊いただけるようになったのではないかと思います。
地元に還元をするサステイナブルなホテル運営
設楽:沖縄県全体として、コロナ渦での沖縄県民割を中心に、地元のお客様への方へのアプローチが、より強化されてきたのではないかと感じます。その影響もあり、地元の皆さんから、より応援されるホテルに昇華しているのではないでしょうか。
高倉:昨年5月に沖縄でも緊急事態宣言が発令され、弊ホテルでもゴールデンウィーク中の稼働が落ち、空室が出ていました。県内の方にとって、ゴールデンウィーク中はお部屋の料金も高く、宿泊がしづらいので、空いている客室に地元のシングルマザーや“ひとり親世帯”のご家族20組を無料(朝、夕食付)でご招待する企画を実施しました。
設楽:なぜシングルマザーのターゲット層にされたのですか。
高倉:やはり、コロナ禍で大変になっている地元の方々がいらっしゃるのではないかと考えたからです。そこで、ゴールデンウィーク中にひとり親家庭のご家族をホテルに招待すれば、ご家族にとっても良い思い出となるのではないか、お子様もホテルに泊まったという思い出から将来ホテル業に進みたいという気持ちが湧くのではないか、沖縄のホテルに滞在してその温かみに触れてもらいと思いました。そのように、ひとり親家庭の親子を応援させていただきたいなという思いから企画をさせていただきました。
設楽:着眼点とターゲットの絞り込みが素晴らしいですね。地域密着で展開されている御社だから気づけたこと、実現できたことなのだと思います。ブランドを作り上げていく上で、今後のビジネスとしてだけでなく、地域貢献としても良いですね。
高倉:弊ホテルの経営は、地元の企業としてお金だけを稼ぐというスタイルではなく、地域に貢献、還元しながら、一緒に育っていくというスタイルで、利益至上主義を掲げていません。いただいた利益の一部を首里城の再建に寄付させていただいたり、ひとり親世帯に還元したり、継続的なサステナブルな経営をできるようにしています。またそれによって従業員が「このホテルで働いていて良かった」と、働きがいを感じてもらいたいという面もあります。そういった意味で、地域にとっても、会社にとっても双方にプラスなると思っています。
設楽:ES(従業員満足度)はこのご時世とても注視されています。先日、とあるホテル経営者様も、「社員一人ひとりが自分の家族に対して誇れるような会社にしていきたい」とおっしゃっていました。それはすごく大切なことで、自分達が楽しく、誇りを持って働くことが、お客様へのサービス向上にもつながりますし、きっといい影響が出るのでしょうね。
高倉:ホテル業界では3年以内の離職率が6割以上あるとのことなのですが、弊ホテルでは離職率1割以下と少なく、求人募集を頻繁にかける必要がないというメリットもあります。
従業員に目的を持たせ、楽しんで働ける環境作りとマルチタスク化を推進
設楽:当然ながら、ホテルを育てていくのは従業員のとお客様ですので、一緒に育てていく中で、リピーターの方が増えるとさらにお互いの関係がさらに強固になりますね。
高倉:あるリピーターのお客様がいらっしゃいまして、その方の“古希のお祝い”の際は、従業員の皆でサプライズでお祝いをさせていただきましたが、ハートフルにお客様というよりも“人対人”という関係性でおつきあいをさせていただいております。
設楽:先ほどのひとり親世帯のご招待企画をはじめ、このようなサプライズ企画も従業員の方からの発案だったのでしょうか。
高倉:はい。従業員からの発案も多いですし、皆、自発的に考えて動いてくれるので、管理者としては非常に助かっています。
また、従業員の皆さんには、生活のために働くというよりは、ある程度目的を持って、楽しんで、働いていただきたいと思っています。例えば、所帯を持ちたいという社員がいれば、キャリアアップできる仕組みを作っていますし、幹部候補になりたいというやる気のある社員がいれば、役職を与え、経験を積ませています。また子育て世代の女性でフロント勤務が難しい場合は、客室管理や予約担当に回っていただくなどの柔軟なスタッフ配置もしています。
逆にその方が、マルチタスク化を推進しているホテルとしては、従業員の皆さんに会社の様々な仕事を覚えていただくことで、助かっている面もあります。ただし、マルチタスク化では、人手が足りないことを理由に、従業員に別の業務をやらせることでやる気を削ぎ、離職につながるということもあります。ですので、従業員に目的を持たせて、キャリアップにつながるということを伝えながら、マルチタスク化に取り組むということがポイントではないかと思います。
設楽:従業員の方一人ひとりを適切な業務に配置するのも会社としてはパワーがかかりますよね。
高倉:そうですね。面談をしながら、「何をやりたい?」、「フロントが難しければ、こういう仕事があるよ」ですとか、産休から戻ってくる方で、フロント業務やフルタイムでの仕事が難しいということであれば、総務のパートタイムに変更したりなど、一緒に面談をしながら本人がやりたい仕事をしていただいています。キャリアアップをし、巣立っていく従業員もおりますが、本当に家族的な付き合いをさせていただいています。でも、弊ホテルくらいの規模だからこそできるのだと思います。
設楽:ちなみに従業員の方は何名いらっしゃるのですか。
高倉:40名未満ですが、ほとんどが正社員です。
設楽:私は、ES(従業員満足度)こそがビジネスの基本であり、人が組織を作るのであると信じております。人材育成や人材活用を原点に置いた上で、CSを磨いたり、レベニューを上げたり、そのサイクルを回して、好循環を産んでいく。とは言いながらも、ES向上が実は意外と一番難しいのですよね。時代やマーケット、その時々の状況に合わせてホテルを進化させていくということこそ、皆さんにとって、進化・成長できるポイントなのかもしれないですね。
高倉:何のために働いているか、頑張った分だけインセンティブがないと、なかなか長続きしないというのもありますよね。でも、弊ホテルは新しいことを始めることが好ですので、仕事がマンネリ化しません。
設楽:たしかに、新たに設置されたプールサイドのサウナなどもSNSで告知されていますし、皆さんのやりたいことをきちんと形にし、継続的に新しいことを発信し、お客様を楽しませていく姿勢は、御社の最大の魅力です。最近では、トレンドやテクノロジーの面で、お客様が先に進んでしまい、ホテル様が取り残されてしまうこともあると思いますが、お客様をワクワクさせ続けることこそが、ホテルのあるべき姿ですよね。
高倉:そうですね。お客様の方がホテルをよく知っているというパターンもありますが、お客様を味方につけてファンになっていただくことは重要だと思います。
設楽:美術品はなぜホテルで展示されようと思われたのですか。また展示に対しするお客様の感想などは見てらっしゃるのでしょうか。
高倉:美術品については、実は父がコレクターでして、実家の倉庫に眠っていた絵画を、管理・維持する上でも、せっかく新館を建てるのであれば、美術品を展示しようということになりました。館内は空調管理もされていますし、多くの方にご鑑賞いただいた方が作者の方も喜ぶのではないか、と考えました。各フロアによって展示のテーマが異なりますが、ご鑑賞いただいたお客様から反応もすごく良く、「非常に見応えがある」というコメントもいただいています。非常階段を使って館内を周遊できるようになっていますので、「1時間位かけてじっくりと鑑賞しました」とおっしゃる方もいます。
また、新館用のアンケート用紙には、「美術品はどうでしたか」、「大浴場は使いましたたか」という質問項目を入れ、回答は回収後にデータ化し、社内で回覧するようにします。そして、改善点があれば改善するという形を取っています。
悪い評価やクレームには、セクションを問わず全員で自発的に対応
設楽:TrustYouのツールはどのようにご活用されていますか。
高倉:お客様からいただく評価(レビュー)ですが、悪い評価は改善しなくてはなりませんので、そちらの方を重視しています。良い評価は皆で共有すればよいのですけれども、悪い評価で改善が必要な案件は、社内でセクション会議を設けるなど、早めに改善できるように対策を取らせていただいています。
設楽:評価はセクション(部署)ごとで見られているのですか。
高倉:いえ、全員で見ています。フロントがレストランの部分を見ることもありますし、その逆もあり、シームレスに評価を見ていまして、悪い評価が社内で回覧されると、「こういう指摘があったので、一度会議をしましょう」という話になり、フロントもレストランも一緒になって改善点を見いだすようにしています。特に悪いところは早めに対応するようにしています。朝食もリニューアルした際には、オペレーションの悪いところが見つかったので、すぐに対応し、会場のレイアウトを変えたりなどしました。常に機動力を持って、対処させていただいています。
また、大きなクレームであれば、私から自分の役職名も入れて、お客様に直接返信しています。特に勘違いが生じていると思われるようなクチコミの場合は、私の携帯番号を入れて、「直接お電話ください」と返信しています。
設楽:従業員レベルで手を打つところと、高倉さんが手を打たれる部分をきちんと分けているのですね。そして、大きなクレームの場合、高倉様の携帯電話の番号まで入れてらっしゃるのですね。
高倉:僕の場合は、最悪のパターンのクチコミをいただいた場合のみ対応させていただいています。お客様との間で思い違いがあったりすることもありますので、そこは直接お話しをさせていただいています。しかし、返信文に私の携帯番号を掲載しても、実際にお電話がかかってくることはあまりないです。代表が対応したということは、きちんと伝えたいと思っていますし、きちんと解決し、お互いわだかまりがないようにしたいと思っています。もちろん、対面でのクレームも私の方が対応させていただきますが、その後にリピーターになっていただくことも多いです。
設楽:マイナスの状態から、ファンになっていただく。腕の見せ所ですね。
高倉:それが私の仕事でもありますので、楽しいですよ。社員の前で対応しますので、社員もこのような言い方をすれば良いのだな、きちんと見てもらいながら、お客様を怒らせない物の言い方など、ある意味自分の背中を見せるようにしています。
設楽:その楽しさが、従業員の方にも間違いなく伝わっているのでしょうね。ところで、従業員教育は細かく実施されているのですか。
高倉:細かくはやってはおりませんが、創業の時からありますモットー我が社のモットー「社員の5か条」、
1)自分の人間性に誇りを持つ、2)紳士・淑女として振る舞う、3)絶えず笑顔で接し、明るくはっきりとした声と正確な言葉で情報を伝える、4)お客様に喜びを自分の喜びととらえる、5)喜びを感動に変えられるプロ・ホテルマンになる、があります。従業員がここから少し外れてしまった場合は、指導をするようにはしています。
また、細かいサービスの技術などは、本人たちのボトムアップのために何か新たに学びたいということであれば、承認するようにしています。「お客様が喜ばれるのであれば、予算を使ってもいいよ」と伝えています。無料のアップグレードなども、上司の確認を取らずに従業員の判断で可能となっています。例えば、「ハネムーンで来ています。お祝いで来ています」など、お部屋が空いていれば、常に従業員の方で対応しています。
設楽:外資系のホテル様では、スタッフ一人あたり使って良い予算やルールなどは決まっているところもあるようですが、御社のスタッフの皆さんは、自発的におもてなしの一環としてやられているのですね。
高倉:弊社では、クレームに関する対応方法でも、ある程度自分達で決めることができます。全額無料にするのは相当なクレームの場合で上長の承認が必要かもしれませんが、それ意外でしたら事後報告でも大丈夫です。きちんと後処理をして、お客様に気持ちよく帰っていただけるように対応してもらうのが一番良いと思います。
設楽:それは誰かが教えることで、できるようになるのですか。
高倉:それは、経験でしか学べないと思います。とはいえ、何かクレームがあればすぐに無料にするなど、やり過ぎという場合も過去にあったのも事実です。ですので、「この種類のクレームに対しては、この位までの対応で良い」などといった、ある程度のガイドラインはありますし、随時アドバイスをすることで、スタッフと感覚や認識がズレないようにしています。スイートルームに無料アップグレードすれば、大抵のお客様も納得してくださりますが、従業員本人の努力なしでは今後につながりませんので、そこは目線合わせをするようにしています。
設楽:たしかに、そのお客様が戻ってきてくださると、自分達のやったことは正しかったと思えますよね。答え合わせをしながら、成長する。基本的な考え方としては、O J Tの中で経験して学ぶ、ということですね。スタッフの皆さんへの信頼の証ですね。
高倉:クレーム処理もすぐに上司に振るのでなく、まずは自分で経験してもらい、判断に困ったら上司、そして最後の砦(とりで)が私ということになります。場数は踏ませるようにしています。
設楽:すごい現場ファーストなのですね。
高倉:色々なパターンがありますので、経験してもらいたいと思っています。そして、楽しめるようになれば、一人前だと思います。それによって結果的に、ホテルの評価(レビュースコア)も上がります。
CO2削減証明書の発行をスタート、「環境配慮型ホテル」を目指す
設楽:これからの御社のチャレンジについて教えてください。
高倉:新しい取り組みとして、今年より弊社の電力は100%バイオマス発電の電力を使用しており、CO2を排出しないホテルとして、利用客、団体の皆様に証明書(CO2削減証書)を発行できるようにしています。大体、1部屋1泊あたり18kgのCO2が削減できるくらいの計算になりますので、グループ旅行や企業向けの社員旅行で、SDGsに力を入れている団体様であれば、弊社を選んでいただけるのではないかと考えています。まずは、各主要旅行会社様に知っていただけるように、チャレンジをしているところです。
設楽:ヨーロッパでは、お客様が少し高い料金をお支払いすることで、自分たちが貢献している証明書を得られるような取り組みが進んでいるようですね。
高倉:それで弊社も証明書を発行することにしたのですが、今のところ非常に喜ばれております。お客様は飛行機使い、CO2を排出しながら沖縄にいらっしゃいますが、CO2を排出しないホテルに泊まってオフセットするというような考え方も今後進んでくるのではないかと思います。そこを核とした推進をしていきたいと思っています。バイオマス発電での証明書を発行するホテルは、おそらくまだ日本ではないのではないかと思いますので、そこは推し進めたい分野です。
設楽:テーマ性のあるホテル様の中でも、サステイナビリティはこれからより重要視されていくはずですので、本当に素晴らしい取り組みだと思いますし、環境への配慮をした上で旅行ができる、という魅力を体感できるのですね。
高倉:「環境配慮参加型ホテル」と呼んでおり、今後プロモーションしていきたいと思っています。先日、県外からの研修旅行の団体様向けに、J T A様と私の方から、「ダイバーシティ経営」についてのお話をさせていただきました。その際にも、参加者の皆様にCO2削減照明書をお渡ししましたが、とても喜んでいただけました。SDGsを何から始めれば良いか分からない企業様も多いと思いますので。そういった形の営業活動は今後もっと進めていくべきだと思っています。そして、他のホテル様にも同じようなことをしていただきたいと思います。
設楽: 最近、サステイナビリティのお話はよく聞きますが、皆さん何から取り組んで良いかわからないというところが多いのかもしれないです。まずはプラスチック削減、紙アンケートをオンラインにすることで紙の削減、フードロスをなくすなどが、取組みへの第一歩でしょうか。
高倉:ホテル業では、できることは限られますよね。その所、弊ホテルはオーナー企業ですので、小回りがききます。LGBTに関する研修にしても、バリアフリーにしても、社会にとって良いことをしているので、従業員本人たちもやりがいを感じてもらえると思います。立派なホテルマンになることも重要ですが、環境にも気を使える、配慮できる人間的にも立派なスタッフに成長してほしいです。
設楽:ダイバーシティもそうですが、日本は取り組みへの姿勢含め、諸外国に比べると、進捗がなかなか緩やかですよね。
高倉:そこは、トップダウンで進めるべきだと思います。LGBTQもそうですが、ボトムアップよりもトップダウンで取り組まないと、なかなか進まないです。行動に起こしている企業は、トップが決めていることが多いと思います。良い経営者ほど、ボトムアップで進めるべきことと、トップダウンで進めるべきことの使いわけ(さじ加減)が上手です。
これは、経営者の能力だと思います。もちろん、私も足りない部分はたくさんありますが、従業員からの意見を聞き、最終的な判断をしています。たまに私が先に走りすぎてしまい、後でスタッフに補足の説明をすることもありますので。
設楽:上の人が「やるぞ」と明確してくれると、方針が明確になり、前に進みやすいですよね。また、あまりに重く捉え、真面目に取り組もうとすると、「やらなくてはいけない」という義務感で疲れてしまい、楽しんで良いのか、わからなくなりますよね。
高倉:「それいいね!」と、気軽に従業員から賛同し、取り組んでもらう方が浸透しやすいと思います。ただし、「ボランティアとしては考えないでね」とは常に伝えています。そもそも持続可能な会社経営をしなくてはなりませんので、しっかりと売上を稼いだ上で、社会還元をしなくてはいけない。弊ホテルは、幸い収益源がありますので、それを活用し、社会に還元していくべきだと思っています。社員もそれを考えて、ぜひ楽しんでいただきたいです。一人ではできなくとも、会社であるからこそできることもありますので。
弊ホテルは誰もやっていないことをやるのが好きなので、二番煎じはダメで、何でも一番に最初にチェレンジしたいのです。もちろん、失敗することもありますので、何が従業員やお客様にとって面白いか、喜んでもらえるかは、常に考えています。
これは私自らが始めた企画なのですが、テントサウナをプールサイドに持ち込んで試してみたいという友人の話から始まり、12月にテントサウナをプールサイドに設置し、試してみたところ、プールが水風呂代わりになるので、とても気持ちが良いことがわかりました。ホテルでも導入しようという話になり、その後一般社団法人沖縄アウトドアサウナ協会という団体まで作り、テントサウナ自体の販売を初めました。このように楽しみながら仕事にもつなげています。
異業種の方とのお付き合いも多く、色々なヒントをいただきます。このプールを設置した際も、外部の方からアイデアをいただき、「ブールがあると資産価値が上がるよ」とアドバイスをいただいたことがきっかけでした。客層が変われば、それが室料に転換できるので、稼げるプールとなるのです。また、ブランディングでの面でも良い決断だったかなと思います。
設楽:さすがですね!フットワーク軽く、「とりあえずやってみよう!」というチャレンジ精神は、このご時世特にとても大切ですよね。そして、協力者が社内だけでなく社外にも沢山いらっしゃることで、スピード感を持って実現させることができるのですね。今後も、御社の進化を楽しみにしております。
本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
ホテルパームロイヤルNAHA国際通り 公式HP:https://palmroyal.co.jp/
高倉 直久 氏 プロフィール:
1979年生まれ、沖縄県那覇市出身。沖縄県立首里高等学校卒業、亜細亜大学卒業UCLA extension。大学卒業後、福岡県芥屋ゴルフ倶楽部へサービス研修のため2 年間研修。沖縄県内のゴルフ場に就職後、ホテル立ち上げのため退職。2005 年『ホテルパームロイヤルNAHA 国際通り』支配人に就任。07 年11 月代表取締役総支配人に就任。14 年南部最大のメガソーラー施設の企画立案。事業に従事。LGBT 支援団体(一社)ピンクドット沖縄の代表理事をはじめ、各観光関連10 団体の副会長や理事を兼務している。
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